「有り難さ」を知って始まる 良い循環を呼び込む経営
Series:歯科経営者インタビュー
医療法人社団 健青会
理事長
青山 健一
Kenichi Aoyama
に掲載されたものです。
- 開業当時を振り返ると?
- 何事についても考えが甘かったと思います。当時27歳。居抜きで医院を譲りたいという話をいただき、簡単にできるような気がしてしまったのですね。開業したのですが、現実は本当に厳しかった。患者が来ない。週に3日も医院を開けておけば十分なくらい。地獄の日々。今となっては必要な経験だったと思えますが、もう一度繰り返せと言われたら断ります(笑)。
- 当時のスタッフ構成は?
- 最低限の人手をアルバイトとして雇い、診療していました。職種は、助手だったり衛生士だったり。みな半年と持たずに辞めていきました。私のあり方の問題は大きかったと思います。でも同時に、患者の来ないはやらない医院に応募してくる人は、楽して働くことを目的にしている場合も多かったと思います。患者は来ない、良いスタッフも来ないの悪循環。この当時の葛藤に興味のある方は、『南青山発落ちこぼれ歯医者の逆襲」(デンタルダイヤモンド社)をお読みください(笑)。
- 転機となったのは?
- いくつかのことが重なりました。心労がたたり、肝臓を悪くして入院。健康を損なってはじめて、「生きていられることだけでも幸せだ」という心境になれたこと。そして、この時期に採用した衛生士がとても素直な人で、「もうこんな良い人は現れない! 大切にしたい」という想いが湧いたこと。加えて、縁あってこれまで書きためていたものを出版しませんかというお話をいただき、発刊後に患者が増えていったことです。
- 同時に好転していった。
- 自分の身の回りに生じる現象には、良い循環と悪い循環があるように思います。相手のためにと利他の精神を根本に据えて行動すれば、そういう姿勢の人の思いを自分にも引き寄せる。逆に、自分が自分がと利己主義に陥って行動すれば、同様の思いに染められた人たちに翻弄される。だから、時がそろったのは別に不思議なことではないように思います。
- その後、医院は成長軌道に。
- 拡大路線のように言われることもありますが、規模の目標など持ったことがありません。患者が来てくれるなら応えたい。応えるためにも、良い人材がいたら採っておきたい。あの時代を考えたら、良いスタッフに出会えるなんてことは本当に「有り難い」こと。採って大事に育てたい。そう思って目の前のことを追っていたら、こうなっていたというだけのことです。
- 多くのスタッフを管理するようになった。
- スタッフ7~8人までは、まだ何となく院長の力で回している気にもなれましたが、この人数になるとさすがにそんな勘違いもできない(笑)。今医院を経営できているのは、スタッフのおかげ。そのおかげで私も食べていける。なおのこと、スタッフを大事に育てなければとなってくる。結局、利他と利己は、最後には境目のないものになるのかもしれません。
- PROFILE
- 1965年広島県生まれ/1990年広島大学歯学部卒業/同年~東京都内の診療所で勤務医として経験を積む/1992年南青山デンタルクリニック開業/2001年法人化/現在、青山・銀座・神田・新宿で計4医院を運営。『南青山発落ちこぼれ歯医者の逆襲」(デンタルダイヤモンド社)、『誰も思いつかなかった歯科医院経営の秘訣』(クインテッセンス出版)他著書多数。
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