「いま、ここ」に立ち返って知る自分の心

ビジネス書コーナーを歩くと、マインドフルネスという言葉によく出くわします。マインドフルネスは、自分の身体や気持ち（気分）の状態に気づく力を指し、瞑想をベースにした認知療法の一つとして広まってきた言葉です。心に浮かぶ思考や感情に従って価値判断をするのではなく、そこから一歩離れて自分の心を観察することで、「いま、ここ」で起きていることをフラットに評価して建設的な自己決定に自らを導くこと、または実態以上に否定的な考えに陥ることを防ぐことに役立つとされています。欧米ではすでにその効果について多くの実証的研究報告があり、タイム誌にも「The Mindful Revolution」というタイトルで特集記事が組まれるほどです。課題解決や創造性発揮のために、またはストレス対処法の一つとして、ビジネス、教育、医療の現場で実践されています。

本書の主題は、意志力です。著者のケリー・マクゴニガルは、意志力を「あなたが本当にしたいことを、あなたの一部が本当はしたくないときにすることができる能力」と定義しています。あることを実現するためにしなければならないことはわかっているのにいつまでも実行できない、またはすぐに取り組みが頓挫してしまう。それは、意志力の問題であり、いわゆる根性の問題ではありません。そのときそのときの心の働きをフラットに検証し、自らを知ることで、自己をコントロールできるようになると言います。「いま、ここ」に意識を取り戻し、心に何が起きているかを俯瞰してから自己評価・自己決定しようとする、まさにマインドフルネスの思考法と同様です。スタッフ育成のヒントになるかもしれません。

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