革新の遺伝子を「現場」からとらえる

「人を育てること」をあきらめていませんか――？

ご存じの通り、人を育てることは組織の発展のために不可欠な取り組みです。しかしながら、「従業員がすぐに辞めてしまう、なかなか成長しない」などの問題を抱えている方の中には、育てることをあきらめてしまっている方もいるかもしれません。そんな方に、待ったをかけているのが本書です。「人をあきらめない」ことを徹底的に説き、教育なくして組織の革新は実現し得ないとしています。発行は10年前ではありますが、「あきらめない」という普遍のフレーズを軸に語られる組織づくりの理念は、今なお共感を与えつづけ、人材育成のエッセンスを感じられる内容となっています。

本書では、「あきらめない組織づくり」のための要素をいくつか紹介していますが、ここでは、そのうちの一つ『モチベーション・エンジン』を取り上げたいと思います。筆者はこれを「やる気を挽き出すコミュニケーション基盤と進化」と定義し、現場サイドの視点から従業員のモチベーションにフォーカスしています。組織を構成する「人」には心があり、そして彼らのモチベーションこそが組織を動かす「熱」であると述べています。ある種の感情論のようにも思えるかもしれませんが、経営者が「あきらめる」ケースの多くは、現場のモチベーションの低下が要因ではないでしょうか？ そこで本書では、現場において、濃厚なコミュニケーションや相互尊重の精神が従業員の主体性を刺激するとし、『モチベーション・エンジン』を強化するための具体的施策を紹介しています。「組織は生き物」と前提に掲げながらも、現場を循環させる「仕組み」も同時に必要だとする本書。明日からでも実践できる方法論が、豊富な事例や客観的な組織評価などを基に述べられています。

このように、現場のモチベーションを感情面だけでなく、仕組みからも理解し、従業員一人ひとりに落とし込むことが、「人をあきらめない組織づくり」の実現に近づくように思えます。人こそが革新の遺伝子となり、組織が進化していく。人手不足が叫ばれる歯科業界においても、この伝承に人材育成のヒントを感じられることでしょう。

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